スタッフインタビュー詳細

『バイカル』を京都から世界へ。後世に残るお菓子を作りたい。

竹田 嘉信(たけだ よしのぶ)
取締役 製造部長
バイカル下鴨本店 グランシェフ
<1991年入社 正社員>
一級菓子製造技能士
職業訓練指導員

PROFILE
高校の普通科を卒業後、『バイカル』に入社。実家は『バイカル金閣寺店』のすぐそばで、誕生日ケーキもクリスマスケーキも『バイカル』のケーキで育つ。高校時代3年間、レストランのキッチンでアルバイトをしながら料理を学ぶ。料理人を目指す道もあったが、洋菓子への興味と幼い頃から慣れ親しんでいた『バイカル』の味に惹かれパティシエの道へ。入社後は『バイカル金閣寺店』配属となり、他店舗での店長経験を経て、現在は『バイカル下鴨本店』のシェフパティシエを勤める。2006年西日本コンテストAクラス優勝。

(インタビュー 2016年11月 バイカル金閣寺店にて)
創業からの心を守り、鮮度にも材料にもこだわっています。

-お菓子を作るとき、大切にしていることは?

「常日頃から鮮度は大切にしています。作りだめしないで、作り立て・できたてのケーキをお店に出す。『バイカル』はお店に工房を併設するのが基本的な考え方なので、段取り優先で前の日に作ったりはしません。もちろんケーキの種類によっては前の日に作ったほうがしっとりとして、生地とクリームがなじんで美味しいというのはありますが、それ以外のものは、その日できたてのものを出しています。」



-材料へのこだわりは?

「材料は日々最小限で仕入れ、新しいものを使っています。いくら作りたてと言っても、材料が古ければそれは古いものになります。創業以来『材料はけちるな』と。『材料を大事にするのはもちろん、厳選されたいい材料を使いなさい』という考え方が受け継がれてきました。安い材料はいくらでもありますが、安いものは安いなりの味なので、昔から厳選された材料を使っています。」


-バターなども一時、価格が高騰しましたよね。

「そのときに他社はマーガリンに変えます。どうしても今までの値段でバターを使うと原価的に厳しいので・・・。いろんな取引先様がバターの代用品ですと言ってマーガリンを持って来られます。確かに、今のマーガリンは技術も進んで非常においしく、良くなってきてはいますが、やはりバターと比べると味が落ちるので、マーガリンは使わずに完全にバターだけを使っています。」


-馴染みのお客様だと、味が変わるとわかられる?

「わかりますね。一時期、バター不足でバター自体が全く入らないときがありました。そのときばかりは商品が作れないので、マーガリンを少し混ぜたりしたこともあります。馴染みのお客様から『最近、味が変わったね』と言われ、味を落とすよりは今手に入るバターだけで作れるものだけ作ろうと。その時に材料だけは落とすなというのは強く思いました。」


-すべての材料にこだわりを?

「一番いい材料となるといくらでも高いものがあるので限界はあります。チョコレートにしてもバターにしても代用品はいくらでもありますが、『この商品にはこれでないと』というのが絶対にあります。生クリームでも『このメーカーのこのパーセントでないと』というのがあるので、そこの絶対に変えられない部分はいくつかあります。」

お客様のお顔が見えるからこそ、より一層、思いが入ります。

-ホテルやレストランのパティシエではなく、店舗のパティシエである魅力、『バイカル』だからこその魅力は?

「ケーキを買いに来られたお子さんがすごく喜んでくれている姿や、お客様がどんな顔をして買って行かれるかが、すぐ目の前で見えるところです。『金閣寺店』だと2階に工房があるので下に降りないとわからないのですが、『下鴨本店』はオープンキッチンなので、ひょいっと覗けばすぐに見えます。」


-お客様からのどんな言葉がうれしいですか?

「一番うれしいのは『この前のケーキ美味しかったよ』と言っていただくことですね。そんな言葉を頂くのは常連のお客様ですが、初めてのお客様でも『美味しそうやね』『きれいやね』と言ってくださったり、最後に、笑顔で『ありがとう』と言って帰って行かれるとうれしくなります。お子さんの誕生日の特注ケーキもよく注文が入りますが、販売スタッフが製造の詳しいところまでは答えられない場合は、直接、ご注文を伺うようにしています。お子さんも一緒について来られていて、お顔を見ると『あぁ、この子のケーキなんやなぁ』と思うと頑張っておいしいケーキを作ろうと思います。」


-思い入れが強くなりますか?

「気合も入りますよね(笑)。もちろん基本的にはみんな平等ですが、直接頼まれると『よっしゃ、まかしとけ』となりますね。自分の子どものケーキは気合いが入るのと同じで、注文のときにお顔が一緒に見えるというのは『バイカル』ならではかなと思います。」


-ウエディングケーキもあるようですね。

「はい、あります。ウエディングケーキはホテルやレストランと契約しているので、営業部やブライダルプランナーさんとのやりとりがメインですが、時々、お客様が直接、作ってほしいと来店されることがあります。先日も、大阪にお住まいの方で、京都で式を挙げるので特注のウエディングケーキを作って欲しいと、休みのたびに打合せに通ってくださったお客様がおられました。何度も来ていただいているうちに信頼関係ができて、最後に『お願いしますね』と帰って行かれる姿を見送ると、作るケーキは同じでも気持ちの入り方が変わります。最後まで見届けたいという思いで、結局、納品まで立ち会いました。」

四六時中、お菓子のことを考えています(笑)

-グランシェフでも、新人の頃には失敗したことも?

「新人のときなんて失敗ばかりです(笑)。パンもいろいろ作らせていただいたのですが、砂糖を入れ忘れたり塩を入れ忘れたり、そんな経験をいっぱいしてきました。ただ、それで塩を入れ忘れたらこうなるというのがインプットされ、その生地はどうすれば直るかということも習うので、失敗ですけれども一つの経験になります。それが、今の、部下への指導に生かされていると思います。」


-お休みの日には、他のお店を訪れたり勉強も?

「若い頃は、休みの日に他社のお菓子をよく見に行きました。基本的に食べること自体も好きなので、20代の頃はケーキ屋さんばかり行っていましたが、次第にそれ以外のところにも行くようになりました。コンクールにも出ていたので、美術館に行ったり本屋さんに行ったり。最近は洋菓子店を見るより、和菓子店さんを見るほうが多くなりました。商品の見せ方やディスプレイの仕方に季節を感じられるので勉強になります。」


-西日本のコンテストで優勝した作品の発想はどこから?

「あれは画集を見て思いつきました。お菓子のアイディアは年中、考えていますよ。街を歩いていても、これを飴細工で作ったらどうなるのだろうとか、これをチョコレートで作れないかなとか、この模様は面白いなとか、建物のカタチが変わっているなとか。何でもお菓子に結びつけて見てしまいます(笑)。」

人を育てることが何よりの喜び。褒めるときはしっかり褒めます。

-今は、育てたスタッフが次々と賞を獲るようになりましたよね。

「それがね、もううれしいんですよ。自分が教えて育てたスタッフが賞に入ると、最初は何にもできなかったのに、よくここまで頑張ったなぁと自分のときより本当にうれしいです。」


-どんなことを大切に、人を育てていますか?

「できたらちゃんと褒めてあげるということです。めったに褒めないですけど(笑)。滅多に褒めないですが、褒めるべきところは、きちんと褒める。それは本当に心から喜んでいるので。そうすれば相手も頑張ろうという気持ちになれるかなと思うので、しっかり褒めます。」


-どういったときに褒めますか?

「ぼくは技術者なので、技術的なことです。たとえば、飴細工やマジパン細工であったり、普段の仕事の中で、絞るのが上手になったスタッフには『いいね、これ』とか、『うまくなったなぁ』『早くなったなぁ』『腕上げたなぁ』とかね。『美味しいのを作るようになったなぁ』とか。美味しいのを作るようになったときには『これ、美味しいなぁ』と素直に認めるようにしています。」


-逆に叱るのも難しいかなと思うのですが。

「叱るほうが多いですけどね(笑)。ただ、叱っても、その後いつまでも怒っていないです。すぐ切り替えられるほうだと思っているので。注意したり怒っても、次の瞬間には違う話題がきちんとできるようにしています。」

『バイカル』はチャンスにあふれる会社。やる気のある人には向いています。

-これから、こんなことにチャレンジしたいという目標は? 

「京都という土地柄、世界の人が来られるので、大きなことを言えば『バイカル』を京都から世界に発信できるようなお菓子が作りたいです。今、観光客がものすごく増えているので、そちらに向けた商品開発もしていかないといけないのですが、基本的には地域のお客様に喜んでいただくというのが大前提です。大半のお客様が地域の方々なので『バイカル』のお客様をまず大切に。お客様が求めている、いいものをきっちり作るということです。個人的な目標としては、自分の作ったお菓子が、自分が死んでもお菓子だけは残っているというのがいいかなと思っています。」


-最後に、パティシエを目指している人にメッセージを。

「いいことばかりではありません。何でもそうですが、仕事を身につけるには時間もかかります。朝は早いし夜も遅くて、体力的にはしんどい仕事です。けれど、『バイカル』はお客様の姿が見えたり、いろんなチャンスがたくさんある会社だと思っているので、やる気のある人、洋菓子職人を目指す人には本当にやりがいのある会社で、洋菓子職人(パティシエ)は楽しい職業だと思います。」

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