松原交通株式会社
代表取締役

飯尾 源明

お客様のニーズに応え、満足していただけるように。
乗務員一人ひとりが質の高いサービスを目指しています。

創業60年以上の歴史を持つ松原交通ですが、昔の乗務員さんと今の乗務員さんは違いますか?

「乗務員の本質的なものは今も昔も歩合制で走っていますので本質的なところは同じかもしれませんが、お客様が高度なサービスを求めておられるのを今の乗務員は認識して走ってくれています。乗務員自身がここまでしないとお客様が満足されないということを自然に感じ取っています。まわりの先輩もそうしていますので、新しい人や若い人も同じようにしようという環境ができていると思います。」

松原交通にはどのような乗務員さんが多いですか?

「乗務員の心理としては、お客様に喜んでいただけるようにという気持ちは常に持っていると思います。お客様が『運転手さん、近くて申し訳ないんですけど行ってくれますか?』とおっしゃれば『何をおっしゃいます。近いお客様をうちはだいじにしています。2キロ手前で降りるお客様はまだ距離が余っているくらいです。遠慮しないで乗ってください』というのが今の運転手さんであり、当社の姿勢でもあります。」

乗務員さんからはよく「お客様本意」という言葉が出てきますが、サービスの指針があるのでしょうか?

「会社からはこうして欲しいという細かいことは一切言わないんです。いつも専務と話をするのは、会社と従業員との間に信頼関係があれば、言わなくても以心伝心するのではないかと。自分の仕事の管理を自然に考えて実行しますので、改まって教育する必要がないんです。」

この世の中でいかに自分を活かすか。
それを理解できるとサービスの質が変わってくる。

この世の中でいかに自分を活かすか。<br>それを理解できるとサービスの質が変わってくる。

教育とは違う方法で人を育てる風土があるのでしょうか?

「『類は類を持って集まる』ということわざがありますが、類というのはつまり環境です。仕事場の環境が一つの形となって表れ、それを類と言うのでしょうが、うちの会社においては今は改まった教育をしなくても、まわりの乗務員がそれを会得して実行しています。新しい乗務員が入ってくるとまわりの乗務員と歩調を合わせて、しっかりとサービスを実行しようという気持ちに自然となるようです。この会社で自分が何をしようかと、仕事のための仕事と言うのではなく、この世でいかに自分を活かすか。仕事と言うと私益になりますが、そうではなくこの社会で自分をどのように活かすか、それがわかると自然に行動に移してくれます。そこが一番大切ですね。」

社長から直接、乗務員さんに声かけをされることもあるのですか?

「朝、点呼の際に出庫する乗務員に運行管理者や経営陣から声をかけるのですが、一人ひとり、毎朝顔を見ると先輩にも後輩にも声をかけるようにしています。先輩には今度新しい乗務員のなにがしが入ったと、だから一人前になるまでしっかり教えてほしいということも伝えます。」

先輩が後輩を育ててくれるのですね。

「入って来た人の名前と、どういう人かと自分なりに感じた人柄を伝えます。こういう人が入ってきたので、その人に会って教育してあげてほしいと先輩に言うと『わかりました』と。次に会った時に『印象どうでした?』と聞くと、自分はこういう印象を受けましたと話してくれます。『期待しているから頼むで。今はそこそこでも1、2カ月すれば優秀な成績を残せるようにどこが足りないかを教えてやってほしい』と頼むと、先輩は本当に一生懸命やってくれます。」

新しい乗務員に最初にかける言葉は
「楽しく仕事をすること」そして「命を預かるということ」。

売上については要求されないのですか?

「実は部長時代は物凄く成績にこだわりました。それはもう厳しかったです(笑)。その時期を過ぎて社長になって35年を越えましたが、人というのは学校の成績と同じで『5、4、3、2、1』は存在するということを認めたんです。5の人は放っておいても絶対5で帰ってきますが、4も3も2も1もあるので、1の人を2になれとは言わない。成績のことは一切言わない。それを言うと職場内が少し変化するんです。ですが成績に触れないとみんな機嫌良く仕事をしてくれるんです。楽しく仕事をするというのが何より大事ですからね。」

楽しく働くことが最後には成績に繋がっていくと?

「新しい乗務員に一番先に言うのは『楽しく仕事をしてほしい』と。これがぼくの最初の言葉やでと伝えます。楽しく仕事をすること。そして『命を預かるということを忘れないでほしい』と。命はかけがえがないのでこれは絶対に忘れないでほしいと。この二つの言葉を最初にかけます。」

みんなで有休を取るのも仕方がない(笑)。
ただ、年末年始は会社に協力してほしい。

乗務員さん同士も仲が良いですね。

「みんな一緒にね、和気あいあいといろんな話題を提供して楽しみながら仕事をしているようですね。ゴルフの好きなグループもあれば、歌謡曲を歌いに行くのが楽しみなグループもあります。旅行が好きなグループは4、5人で旅行に行くのですが、それも構わないと言っています。そんな時はみんな一緒に有休を取ります。一人ならいいのですが4、5人が固まると何台か止まるんですね。昔は怒ったものです(笑)。固まって休んだら困ると。でも、今はそれも言わないようにしています。楽しんでおいでと。行け行けと奨励はしませんが、行くのは仕方がないかなと思うようになりました。」

他から来られた乗務員さんは驚かれるでしょうね。

「そうですね。ただ一つ、年末年始だけは会社の言うことを聞いてほしいとお願いしています。年始は松原市民の方が晴れ着を着て、タクシーに乗って難波へ出て行かれます。それに台数が足りなければ『今日は台数が足りないです』とはお客様に言えません。年末年始だけは台数はこれ以上減らせないので有休を制限しますよとこの時だけは制限するのですが、乗務員たちもみんな快く協力してくれています。」

求めているのは常識と良識のある人。勘がいい人。
そしてこの仕事に情熱を持っている人。

求めているのは常識と良識のある人。勘がいい人。<br>そしてこの仕事に情熱を持っている人。

どのような人物像を求めていますか?

「常識、良識。これはもう絶対に必要なんです。でないと波長が合わないんですね。そのうえで勘がいい人。この仕事には勘が必要なんです。お客様と話をするにも相手がおっしゃっていることをどう捉えるか。間違った捉え方をすると困るので、勘がいい人に来てもらいたいですね。それと情熱です。この仕事に情熱を持っている方を求めています。」

みんなが一つの想いで、同じ方向に向かっているんですね。

「ぼくはあまり細かいことは言わないのですが、朝会って気持ち良い挨拶と送り出す時の労い、これは毎朝忘れません。うちの乗務員はみんな出て行く時に『行ってまいります』と言うんです。こちらは『気付けてな』と答えるのですが、これはいつの間にか毎朝続けています。」

社長と乗務員さんの距離が近いですね。

「たまに朝早く7時頃に来ると、早い乗務員は6時後半には来ますので、会えたと言って喜んでくれるんです。『今日、社長早いですねぇ』と言われて『いやぁ、この時間に来たら君と会えるかもわからんなぁと思って』と言うと『そうですか』とうれしそうな表情をしています。みんな永く勤めてくれていて、途中退職がほとんどないですね。」

新しい時代に向けて、ヴィジョンをお聞かせください。

「これからもこの松原という地域を大事にしていきたいと思っています。松原市民と私どもの乗務員とがしっくりといくと言うのでしょうか。『松原交通』の乗務員さんは安心できる、信頼できるという関係を作りたいですね。創業60年を越えましたが、昔からの商売を続けてきて『松交さん、松交さん』と言われてきましたので、愛称で呼んでいただける、なんとも言えない市民とのつながりを大切にしています。将来、松原市と松原交通は一体のもので、松原市に松交さんがあれば入る余地なしというくらい、しっかりと守っていきたいですね。」

インタビュー:2016年12月