脊髄損傷って、どこの損傷?
脊髄損傷でみられる症状とは?
国内でもほとんど実施されていない直接投与の幹細胞治療
脂肪由来と骨髄由来、どっちがいいの?
リペアセルクリニックの脂肪由来による幹細胞治療の流れ
まとめ
脊髄損傷と再生医療
脊髄損傷って、どこの損傷?
脊椎は24個の椎骨と尾骨(仙骨)で構成されています。そして椎骨は体重のほとんどを支えるため、大きな負荷がかかっています。また、それぞれの椎骨の間には椎間板が挟まっており、衝撃を和らげて骨を保護する役割を果たしています。
この連なった脊椎の中に脊柱管と呼ばれる神経の通り道があり、脊柱管の中にある神経を脊髄と言います。脊髄は長い管状の構造物で傷つきやすく、脳幹の下端から脊椎の一番下近くまで続きます。また脊髄神経は、脳と他の部位の間でやり取りされるメッセージを伝達します。
脊髄損傷とは、主に高所からの転落や不慮の事故、スポーツなどによる外傷で脊椎に強い外力が加わることで内部に通っている脊髄神経に損傷が起きるものです。
そのほかにも、最近では高齢者に多く見られる「非骨傷性頸髄損傷」が増えています。骨粗鬆症などが原因で特に大きな外力がなくても脊髄神経を損傷してしまうことをいいます。主に上肢の痺れや手の動きが鈍くなるなどの症状がみられます。
脊髄損傷でみられる症状とは?
症状は脊髄の損傷部位によって麻痺の出方が変わり、損傷は大きく「完全麻痺」と「不全麻痺」があります。
完全麻痺では筋肉の運動は全くできなくなり、感覚も消失します。不全麻痺の場合は一部の運動や感覚は残存します。また、頸髄の上位を損傷してしまった場合は自発呼吸が不可能となり、生命維持のためには人工呼吸器が必要となります。その他にも、排尿排便障害などが起こります。
①呼吸器症状
第4頸髄以上の高位で損傷すると横隔膜の運動ができなくなるため、自発呼吸が不可能となります。その場合は人工呼吸器を必要とします。第4頸髄より下の損傷でも肋骨の動きが制限されることがあり、痰を出しにくくなったり肺活量が低下したりすることで無気肺や肺炎のリスクが高くなります。
②循環器症状
起立性低血圧で起きたときに低血圧になったり、徐脈などがみられたりします。下肢の運動麻痺によりエコノミー症候群や深部静脈血栓症のリスクも高くなります。
③消化器症状
胃腸の動きが悪くなり、胃潰瘍や麻痺性腸イレウスになることがあります。
④泌尿器症状
排尿と排便の機能が低下するため、尿路感染症のリスクが高くなります。また、オムツを必要とすることもあります。
⑤褥瘡(床ずれ)
手足の運動麻痺のため、寝返り等の体位変換がうまくできず、圧迫されている部分の皮膚が血流障害を起こし床ずれができます。また、長時間車椅子に座ることで仙骨にも褥瘡ができやすくなります。
国内でもほとんど実施されていない直接投与の幹細胞治療
今までは脊髄損傷に対しての有効な治療法は無く、後遺症により車椅子を使用した生活や寝たきり生活を余儀なくされている現状があります。しかし近年、様々な研究が進み幹細胞を使った再生医療により後遺症が回復した症例が数多く報告されています。
ただし、一般的に国内で行われている脊髄損傷の再生医療といえば、幹細胞を点滴で血管の中に投与して脊髄に届けるものです。ところが血管に入った幹細胞は全身に駆け巡るため、実際に損傷した脊髄に届く頃には幹細胞の数はどうしても少なくなってしまいます。
そこで、まだ国内ではほとんど認可されていない方法ですが、損傷した神経部位へ確実に幹細胞を投与する「脊髄内幹細胞療法」といわれる治療法があります。この治療法は、脊髄の損傷部に対してダイレクトに幹細胞を届けることができ、点滴を使用し全身へ投与するよりも脊髄神経の再生能力を高めることが期待できます。
治療も簡単な注射で数分だけの処置となるため、それほど痛みを伴いません。また、点滴と併用することによりさらなる効果が期待できます。
脂肪由来と骨髄由来、どっちがいいの?
脊髄損傷の治療に用いられている再生医療には大きく分けて、骨盤からの骨髄由来の肝細胞治療と脂肪由来の幹細胞治療の2つの方法があります。近年の研究では脂肪由来の幹細胞の方がより治療成績が高いという研究や論文が報告されています。
また、投与する幹細胞の数は多い方が、明らかに治療成績が良くなります。その点でも脂肪由来の幹細胞は培養しやすく多くの細胞を投与できるため、骨髄由来の幹細胞よりも高い治療成績が期待できます。
また、骨髄から幹細胞を採取する骨髄穿刺(マルク)は、感染時のリスクが高いというのも、脂肪由来の幹細胞が選ばれる理由の一つです。
リペアセルクリニックの脂肪由来による幹細胞治療の流れ
幹細胞治療は局所麻酔をしてから自身の脂肪をごく少量採取し、約1ヶ月かけて幹細胞を培養したあと注射で投与します。脂肪の採取も幹細胞の投与も身体への負担が少なく、簡単な日帰りでの治療となります。
①レントゲン、MRIなどの画像や身体の状態をしっかり診察した上で、再生医療の適用となるかを判断し、今後の治療方針や治療においてのメリット、デメリットを納得できるまで相談します。
②採血を行い、感染症の有無や治療可能かの判断を行います。
③下腹部周辺を局所麻酔して5ミリほど切開し、脂肪を米粒2~3粒ほど採取します。所要時間は20分ほどでほとんど痛みはありません。
④CPC(細胞加工室)で培養します。培養には約4~6週間ほどかかります。
⑤培養した幹細胞を脊髄のくも膜下に注射をします。局所麻酔も行いますので痛みはほとんどありません。
まとめ
始めに記載した通り、脊髄損傷に対する有効な治療法は確立されておらず、後遺症による車椅子生活や寝たきり生活をいかに改善できるかどうかが重要になってきます。症状や日常生活の状況をしっかり専門医と相談した上で、再生医療を実施するかどうかを決定する必要があります。