変形性膝関節症とは
膝関節の構造
膝が痛むメカニズム
変形性膝関節症の原因
変形性膝関節症の進行の程度
変形性膝関節症の画像診断と診察
変形性膝関節症の治療法
・薬物療法、物理療法、
・観血療法(手術)
変形性膝関節症を予防するには
診療内容
変形性膝関節症とは
変形性膝関節症とは、軟骨がすり減ることで膝に痛みを感じる疾患です。男女ともに年齢を重ねるほど発症率は高くなりますが、特に50代以降の女性に多く発生します。
初期には膝の違和感程度だったものが進行すると痛みで歩行が困難になり、O脚やX脚といった外見上の変形も見られるようになります。変形性膝関節症の発生原因には加齢のほか、負担のかかりやすい関節の構造にもあります。この記事では変形性膝関節症について詳しく解説するとともに予防策までお伝えします。
関節軟骨は主にコラーゲンで構成された水分が豊富な組織で、弾力性があることから骨の端を覆うように付着し、大腿骨と脛骨が直接ぶつかり合わないように働きます。半月板は上方から見ると半月の形をしていることから半月板と呼ばれます。
半月板は大腿骨と脛骨の間にあり、外側と内側に1枚ずつ存在します。
変形性膝関節症でよく「軟骨がすり減る」と耳にしますが、この軟骨とは関節軟骨と半月板のことを指します。これらの軟骨がすり減ると、膝のクッション性が失われることで変形性膝関節症につながります。
膝関節の構造
膝関節は大腿骨・脛骨・膝蓋骨から構成される関節です。膝関節は立位の時には体重を支え、歩くときには地面からの衝撃を緩和するように、日常生活を送る上で大事な役割をしています。
歩行に必要な膝の屈伸運動では、単に膝が曲げ伸ばしされているのではなく「ころがり運動」「すべり運動」といい脛骨の上を大腿骨がころがり、すべることで初めて膝の曲げ伸ばしが可能となるように、屈伸運動だけでも複雑な動きがかかります。
また膝関節は足関節や股関節と違い不安定なため、筋肉や靱帯、軟骨により安定性を高め、衝撃の緩和がなされています。
膝の安定や衝撃の緩和には、大腿四頭筋やハムストリングス・腓腹筋といった筋肉や、前十字靭帯・後十字靭帯、内側側副靱帯・外側側副靭帯といった靭帯が膝関節の前後左右の安定性を担っています。
また膝関節のクッション作用は筋肉と靭帯だけでなく、関節軟骨と半月板も膝への負担を緩和させています。
関節軟骨は主にコラーゲンで構成された水分が豊富な組織で、弾力性があることから骨の端を覆うように付着し、大腿骨と脛骨が直接ぶつかり合わないように働きます。
半月板は上方から見ると半月の形をしていることから半月板と呼ばれます。半月板は大腿骨と脛骨の間にあり、外側と内側に1枚ずつ存在します。
変形性膝関節症でよく「軟骨がすり減る」と耳にしますが、この軟骨とは関節軟骨と半月板のことを指します。これらの軟骨がすり減ると、膝のクッション性が失われることで変形性膝関節症につながります。
膝が痛むメカニズム
膝に負担がかかり関節軟骨や半月板がすり減ると、関節液内に散乱したかけらや摩耗片が滑膜を刺激することで炎症を起こし、痛みとして認知します。軟骨のすり減りが進むと大腿骨と脛骨のクッションとしての役割が果たせず骨同士がぶつかりあいます。度重なる刺激により骨がトゲ状に変化する骨棘(こつきょく)が出現しさらに痛みが悪化します。
時には滑膜の炎症を抑えるために関節液が分泌され、「膝に水がたまる」ことがあり、これを関節水腫と言います。
変形性膝関節症の原因
膝関節は人体の中で特に大きな負担がかかる関節です。変形性関節症の発生率も膝の関節が高く、その原因は一次性・二次性のものに分けられます。
一次性変形性膝関節症
変形性膝関節症の多くは、加齢により筋肉の衰えや、肥満などで関節軟骨の劣化と度重なる膝への負担で軟骨が摩耗します。また膝を傷める以前から、O脚やX脚といった変形がある場合にも膝への負担となります。
二次性変形性膝関節症
関節リウマチ・半月板損傷や靱帯損傷といった外傷が起因となり変形性膝関節症を起こすこともあります。
変形性膝関節症の進行の程度
変形性膝関節症は進行の程度により、軟骨が摩耗し骨棘が形成されます。
前期
関節軟骨のすり減りが認められるが自覚はなく、健康な状態と変わりません。ここから年月をかけて徐々に進行していきます。
初期
関節軟骨のすり減りは進行し、一定の部位に負担がかかり続けるために軟骨の下の骨が硬くなる軟骨下骨硬化が認められます。また骨と骨の隙間が狭くなり骨棘を認められるほか、膝の痛みを庇うことで関節が拘縮します。
進行期
骨棘の形成がさらに進行し、O脚やX脚といった脚の変形も進行します。また動き出しや立ち座りに痛みを感じ、正座ができなくなります。
末期
これまでクッション材として機能していた軟骨がすり減り、関節の隙間がなくなり骨同士がぶつかり合います。じっとしていても痛みを感じるようになります
変形性膝関節症の治療法
変形性膝関節症の治療は、生活習慣の見直しにより膝への負担を減らすことから始め、運動療法を中心に膝への負担を減らしていきます。痛みに対しては薬物療法や物理療法により痛みの軽減に努めます。
膝の痛みにより日常生活を送ることが困難である場合や、膝の変形が大きい場合には観血療法が選択されます。
生活習慣の見直し
膝の負担を減らすように見直します。例えば正座などの地べた中心の生活では膝に負担がかかるので、椅子とテーブルを用意します。他には深くしゃがむ姿勢をなるべく取らないように洋式トイレに変更したり、手すりをつけることで体重を分散し膝への負担を減らします。
膝の痛みで関節を動かさなくなると筋力が衰え、悪循環に陥ります。まずは生活習慣を見直して、少しでも膝への負担を減らすことを意識します。
運動療法
膝周囲の筋肉が衰えないようにトレーニングを行います。主に足上げ運動のように大腿四頭筋を鍛えることで膝の安定性が増し、膝への衝撃を緩和できます。
・足上げ運動
①寝転んだ状態で片側の膝を曲げます。
②もう一方の脚を伸ばし足首は90度曲げます。
③地面から10センチ程上にあげ5〜10秒キープします。
(この時太ももの前面の筋肉を意識します)
④ゆっくり地面に下ろします。
③~④を20回ほど繰り返し行います。
反対も同じように行い終了です。
トレーニングでは痛みと相談しながら、無理なく行えるものから取り入れていきます。
変形性膝関節症の画像診断と診察
変形性膝関節症の画像診断
膝の痛みで整形外科を受診すると主にX線(X-ray)により変形性膝関節症かどうか診断されます。主に大腿骨と脛骨の隙間や骨棘、骨嚢胞の有無を確認します。またMRI(Magnetic Resonance Imaging)では軟骨や関節液の状態を、CT(Computed Tomography)では骨の厚みや形を確認し、人工関節置換術に適合しているかどうか確認できます。人工関節置換術に向けて確認できます。画像診断ではそれぞれの特徴を生かし使い分けられます。
Kellgren-Lawrence分類
変形性膝関節症はX線で進行度合いを分類することができ、グレード3以上では手術が勧められることが多いです。
グレード0 正常
グレード1 関節裂隙の狭小化はないが、軽度の骨棘や軟骨下骨硬化の確認
グレード2 25%以下の関節裂隙の狭小化、骨棘や軟骨下骨硬化の確認
グレード3 50~70%以下の関節裂隙の狭小化、骨棘や軟骨下骨硬化の確認
グレード4 75%以上の関節裂隙の狭小化と著しい骨棘や軟骨下骨硬化の確認
変形性膝関節症の診察
視診では歩行で膝の変形度合いを確認し、触診では膝の曲げ伸ばしといった可動域、動かした際に痛みや音の有無、水のたまり具合を確認します。
薬物療法、物理療法、観血療法(手術)
薬物療法
薬物療法には薬と注射があります。痛み止めの薬で痛みを抑え、ヒアルロン酸注射により関節の動きをスムーズにします。痛み止めにはまず湿布が処方されますが、効果がなければ非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS=Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)が使われます。また膝をスムーズに動かす役割の関節液の主成分がヒアルロン酸であることから、ヒアルロン酸を注入することで膝の動きを取り戻します。
物理療法
変形性膝関節症に対してホットパックやアイシング、電気などを使い物理的に膝へアプローチします。ホットパックの温熱効果により膝周囲の血流を促し痛みで固まった関節の動きを出すほか、高周波や赤外線により膝の深部へ働きかけます。膝が炎症し熱感が感じられるようであればアイシングで冷やし炎症を抑えます。
観血療法/手術
・関節鏡視下手術
膝蓋骨周囲に穴を開けて関節鏡・手術器具を入れます。傷んだ軟骨や骨棘を取り除きます。軟骨の損傷が広範囲である場合、関節鏡視下手術を受けられない場合があります。
・高位脛骨骨切り術
骨切り術により変形が進んだO脚を矯正する方法です。骨切り術には2種類の方法があります。1つはオープン・ウェッジ法と呼ばれ、脛骨の一部を内側から切り取り、人骨物を入れる方法です。
もう1つはクローズド・ウェッジ法と呼ばれる方法で、脛骨外側を切り取り、長さを合わせるように腓骨も切り取る方法です。オープン・ウェッジ法と比べ、クローズド・ウェッジ法は矯正できる角度が大きい方へも適応できますが、体への侵襲も大きくなる特徴があります。
・人工関節置換術
傷んだ膝に対し金属やセラミックなどを使った人工の関節と入れ替える手術法です。大腿骨と脛骨の関節面を全て人工の関節に置き換える人工関節全置換術と、一部だけを置き換える人工関節部分置換術があります。
変形性膝関節症を予防するには
変形性膝関節症を予防するにあたり、まずは膝への負担を減らすよう生活習慣を見直し、運動する習慣をつけましょう。地べた座りの生活から椅子やソファーへ変更し、筋肉のトレーニングが大事です。膝に痛みがあると膝を動かす機会が減り、筋力が低下するというような悪循環になります。日頃から筋力トレーニングをして、膝の安定性を高め負担を軽減させましょう。