変形性膝関節症とは
変形性膝関節症と人工関節置換術
変形性膝関節症と自己脂肪由来幹細胞治療
人工関節置換術と自己脂肪由来幹細胞治療の特徴
まとめ
診療内容
変形性膝関節症に対して、ヒアルロン酸注射をしても効果を感じられない中、手術はできるだけしたくないと思われる方は多いのではないでしょうか??この記事では変形性膝関節症の治療における人工関節置換術と、手術ではなく注射により軟骨を再生させ、根本からの改善を図る自己脂肪由来幹細胞治療の違いを解説します。
変形性膝関節症とは
変形性膝関節症は膝の変形とともに、痛みや可動域制限を訴える疾患で、多くは50代以降の女性に発生します。変形性膝関節症の主な症状は膝の痛みで、初期には動き出しに痛みを訴え、進行すると動作中の痛みを訴えるようになります。変形が進行した末期には、膝の曲げ伸ばしの動作に著しく可動域制限が出現します。
変形性膝関節症になる原因には、体重の増加や筋力の低下、加齢により膝に負担がかかり発生します。ほかにもO脚やX脚・外傷が起因するとも言われています。
膝の変形が進行すると、関節裂隙の狭小化や消失・骨棘(こつきょく)形成・軟骨下骨の骨硬化が見られます。
変形の進行度はX線(X-ray)撮影の後、Kellgren-Lawrence分類により分けられます。変形性膝関節症が進行するとともにグレードが上がり、グレード3以上で手術が勧められることが多いです。
グレード0 正常
グレード1 関節裂隙の狭小化はないが、軽度の骨棘や軟骨下骨硬化の確認
グレード2 25%以下の関節裂隙の狭小化、骨棘や軟骨下骨硬化の確認
グレード3 50%~70%以下の関節裂隙の狭小化、骨棘や軟骨下骨硬化の確認
グレード4 75%以上の関節裂隙の狭小化と著しい骨棘や軟骨下骨硬化の確認
変形性膝関節症と人工関節置換術
変形性膝関節症の初期には、膝の軟骨の保護とクッション材としてヒアルロン酸注射が行われます。しかし膝の変形が進行した末期になると、人工関節置換術が勧められます。人工関節置換術は、傷んだ軟骨・骨を取り除き人工物と入れ替える治療法で2つの方法があります。
1つは膝の関節全体を人工物と入れ替える人工関節全置換術です。膝の関節は大腿骨と脛骨からなりますが変形により傷んだそれぞれの骨端に人工物を置き換えます。大腿骨に使われる素材はチタン合金やコバルト・クロム合金が主流です。中にはセラミックを使用する例もあります。脛骨に使われる素材は2層になっており、大腿骨側では軟骨の代わりに超高分子量ポリエチレンが使われ、膝のクッションの役割を担い、脛骨側には金属が使われます。
もう1つの方法は、膝の関節の一部分だけを人工物と入れ替える人工関節部分置換術です。変形性膝関節症の原因にはO脚やX脚がありますが、O脚は膝の内側の軟骨が擦り減り、X脚では膝の外側の軟骨が擦り減ります。このように膝の一部だけが傷んだ状態で骨の変形も少ない場合に、一部だけ人工関節にする部分置換術という方法があります。全置換術と比べ靭帯を切除する必要がないため、膝の安定性が高い特徴があります。
人工関節置換術を行うことで、膝の変形が改善し痛みなく歩行ができるようになる一方で、正座ができない・膝を捻る動きができないなどの可動域や運動の制限がかかります。さらに人工関節置換術を行うリスクとして感染症・深部静脈血栓・肺塞栓・出血・神経や血管の損傷・術後の痛みを伴う可能性があることから「できるだけ手術はしたくない」という方もいらっしゃいます。
そんな時に再生医療の自己脂肪由来幹細胞治療という選択肢があります。
変形性膝関節症と自己脂肪由来幹細胞治療
再生医療は最先端の治療法であり、その一つの自己脂肪由来幹細胞治療は、これまで元には戻らないとされてきた膝の軟骨を再生させる治療法です。これまで変形性膝関節症に対する治療の初期にはヒアルロン酸注射が行われ、末期には人工関節置換術が行われてきましたが、自己脂肪由来幹細胞治療その中間にある治療法として注目されています。
具体的な治療法は再生を促す幹細胞を使います。自己脂肪由来ということから自分の脂肪の中にある幹細胞を採取します。採取された幹細胞は4~6週間かけて数千万個~1億個以上まで培養し、膝に注射することで軟骨を再生させます。また自分の細胞を使うので異物と認識されず、アレルギー反応を心配せずに治療が行えます。
人工関節置換術の切開範囲である8〜12センチと比べて、幹細胞を採取するための切開範囲は5ミリと小さいことも特徴です。自分の体に極力メスを入れたくない方には、軟骨を再生させることで根本的な改善を図る脂肪由来幹細胞治療という選択肢があります。
人工関節置換術と自己脂肪由来幹細胞治療の特徴
傷んだ軟骨や骨を人工関節に置き換える治療法の人工関節置換術と、擦り減った軟骨そのものを再生させる自己脂肪由来幹細胞治療の違いを紹介します。
入院期間
人工関節置換術
・2週間〜数ヶ月
自己脂肪由来細胞治療
・入院の必要はなし
切開範囲
人工関節置換術
・8〜12センチ
自己脂肪由来幹細胞治療
・5ミリ
治療効果の違い
人工関節置換術
・O脚やX客を矯正することができる
・軟骨や骨の変わりに人工物を置き換えるため、正座ができなくなる
自己脂肪由来幹細胞治療
・軟骨を再生させ変形の重症化を遅らせることができる
・体の負担が少なく安全に行える治療法であり、入院の必要もない
まとめ
人工関節置換術により、傷んだ骨を人工の関節に入れ替えることで変形が改善され、痛みなく歩けるかもしれません。しかし体内に人工物を入れること・8〜12センチ切開することで感染症や術後の痛みといったさまざまなリスクを伴うことを考慮すると「できるだけ手術はしたくない」方もいらっしゃいます。
これまでの変形性膝関節症の治療には初期にはヒアルロン酸注射が行われ、進行すると人工関節置換術が勧められてきました。しかし再生医療の1つである自己脂肪由来幹細胞治療はご年配の方・手術に抵抗がある方でも安心して受けられる治療であり、自分の軟骨を再生させることで軟骨が擦り減る以前の生活を取り戻すことが期待できる治療法です。