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さかもとクリニック

脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)の再生医療

脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)の再生医療
脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)の再生医療

一度損傷してしまった脳細胞は戻らないとされていました。しかし、最近の再生医療の研究や臨床データでは未分化な細胞である幹細胞を投与することで、脳細胞の機能回復、脳血管が新生することがわかってきました。再生医療により後遺症の改善及び脳卒中の再発予防に効果と安全性が認められました。

当院では脂肪からの幹細胞を利用しております。これは骨髄からの幹細胞よりも臨床成績が良いとの報告があり、なんと言っても、幹細胞の採取が骨髄よりも安全かつ容易に行えることがメリットです。

▼脳卒中の幹細胞による再生医療のメカニズム
・脳神経細胞の再生
・血管再生
・サイトカインによる細胞の修復

▼期待できる治療効果
・身体機能回復
・リハビリ効果増強
・再発予防

脳卒中とは

脳血管の一部が詰まったり、破れたりする症状のことを言います。このような状態になると血液が運ばれなくなるため、言葉を話すことができなくなったり、手足の麻痺や半身麻痺、意識を失ったりといった症状が出てきます。これを脳卒中、または脳血管障害と言います。
脳卒中には脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の3つのタイプがあります。具体的には、脳血管が動脈硬化などで細くなったり、血栓が原因で血管がつまったり(塞栓)して、脳の血流が悪くなることにより、脳組織が障害を受けると脳梗塞を引き起こします。高血圧や高齢によって血管が傷んでしまい、突然血管が破れることによって脳の中に出血するものを脳出血と言います。
脳は表面を包んでいる3つの膜(外から硬膜・くも膜・軟膜があります)から成り立ち、その中のくも膜と軟膜の間、つまり、くも膜の下に出血した場合はくも膜下出血と言います。そのほとんどは動脈にできたこぶ(動脈瘤)が破れて起こるものです。この中で一番患者が多いのが脳梗塞で、脳卒中全体の約7割を占めます。人口10万人あたり一年間に約400名が発症されており、そのうちで約100名の患者様がお亡くなりになっております。

脳梗塞
脳梗塞

脳梗塞とは脳の血管が何らかの原因で詰まったり狭まったりすることで、その先の脳の細胞に栄養や酸素が届かなくなり、脳の組織が死んでしまう病気です。そして詰まると言いましても主に2つのタイプに分かれます。ひとつは、動脈硬化により血管が徐々に狭くなり詰まっていく脳血栓症です。そしてもうひとつが、脳以外の場所で特に心臓の中でできた血のかたまり(血栓)が流れてきて脳内の血管を塞いでしまう脳塞栓症です。そのほかに一時的に脳の血管は詰まり、すぐに血流が再開すると一過性脳虚血発作というのもあります。しかし、最近では脳梗塞を発症の原因に分けて3つの種類に分けられるようになりました。日本人に多く細い血管につまる『ラクナ梗塞』。高血圧や高脂血症、糖尿病などが原因で動脈硬化となり発症する『アテローム血栓症脳梗塞』。不整脈や弁膜症などの心臓が原因で起こる『心原性脳塞栓症』があります。

ラクナ梗塞(症状・診断・治療)

ラクナ梗塞(Lacunar Infarction: LI)とは、日本では脳梗塞の中で最も多いタイプ。脳の中の穿通枝(せんつうし)という200μm程度の細い血管が詰まって起こる病気です。ラクナ(Lacunar)とは小さな空洞という意味で、通常小さいのもので3mm程で、大きなもので20mm程小さな梗塞巣を意味しています。CT検査で小さい梗塞は診断しにくいですが、MRI検査では多数の小さな梗塞が明瞭に診断することができます。高血圧が最も重要な危険因子であり、高い圧力が血管に負担かかるとことで破れたり詰まったりします。その他には高脂血症、糖尿病、喫煙がハイリスクとなります。

症状
高齢者に多く見られ、比較的ゆっくりした症状の進行が見られ、夜間や早朝に発症することが多く、意識障害はほとんど見られません。ろれつが回らない、朝起きたら手足の力が入りにくい、上肢や下肢の痺れがある、といった症状が見られ、来院される方が多く見られます。多発しなければ比較的軽症な場合が多いです。これをラクナ症候群(Lacunar syndrome)と言います。ラクナ梗塞では痛みはほとんどありませんが、まれに視床梗塞が起こると視床痛(Thalamic pain)という痛みを伴うことがあります。

診断
頭部CTで脳出血やくも膜下出血がなければ、頭部MRIを行います。特に拡散強調画像(Diffusion weighted image: DWI)で早期の脳梗塞も検出できます。脳卒中の病型診断、原因の精査のために、MR血管画像(Magnetic resonance angiography: MRA)、心原性脳塞栓症の鑑別のため心電図、心エコー、頸動脈エコー、凝固や線溶マーカーなどの採血検査を行います。

治療
脳梗塞を発症してから4~5時間以内であれば、t-PAという血栓を溶かす薬を使います。また、発症後の時間が経過し、t-PAの効果が認められないと判断した時には、手術やカテーテルを用いた血栓除去などが行われることがあります。さらに後遺症をできるだけ抑えるために、早期にリハビリを必要とします。

アテローム血栓性脳梗塞(症状)

“アテローム”とは、粥状硬化(じゅくじょうこうか)という意味で、主にコレステロールがプラークと言って粥状に血管壁にかたまりを作っている状態です。脳内の比較的太い血管に動脈硬化やこのアテローム硬化が進行し、プラークが破綻すると、血小板や凝固因子が急に活性されて血栓ができ、この血栓が血管内をつまらせたり、血管内の血栓が壁からはがれてその先に流れたりして、脳内の深部の血管が詰まることで起こる脳梗塞です。原因として高血圧、高脂血症、糖尿病の方に多く見られます。また食事が欧米化に近づいたことによるのも原因の一つです。前触れに一過性脳虚血発作を起こすことが比較的多いとされています。

症状
アテローム血栓性脳梗塞にかかると、比較的太い血管が詰まることが多いため、ろれつが回らなくなくなったり、それと同じ片側の手足の麻痺、機能の低下、また同じ片側の目が一時的に見えなくなったりするなどの、苦痛な症状が見られます。そのほかに運動障害、意識障害、半身麻痺、呂律障害、めまい、嘔吐、などの明確な症状が出現することが多いとされています。

アテローム血栓性脳梗塞(診断・治療)

診断
アテローム血栓性脳梗塞を疑う神経脱落症状が発症している時には、原則として速やかに画像診断による確認が必要になります。頭部CTで脳出血、くも膜下出血を検出し、否定されれば頭部MRIの画像診断を行います。MRA、頸動脈エコー、心エコー、心電図、凝固系、線溶マーカーといった採血検査も行います。アテローム血栓性脳梗塞の診断として、梗塞の大きさがラクナ梗塞の診断を満たさず、ラクナ梗塞を発症する領域以外のところに梗塞があること。さらに心原性脳塞栓症の原因である心房細動、大動脈プラーク、卵円孔開存を認めず、脳動脈解離が原因の脳梗塞でもなく、かつ、一過性脳虚血発作の持続時間を満たさず梗塞ができていることによって診断確定とします。

治療
アテローム血栓性脳梗塞の症状は大きな梗塞であり、はっきり出てくるのが特徴です。治療法は、血栓溶解療法や外科的処置によって行います。発症後できるだけ早期に血栓溶解薬剤を静脈注射で投与することによって、脳梗塞の原因となっている血栓を溶かすことができます。できるだけ発症早期にグルドパ(アルテプラーゼ)、遺伝子組換組織プラスミノーゲン活性化因子(recombinant tissue plasminogen activator: rt-PA)、血栓溶解薬を投与します。発症4、5時間以内の脳梗塞に対しては劇的な予後回復が期待できますが、合併症に注意しながら投与します。重度の狭窄である場合は、カテーテルによる血管の内膜剥離により、血栓の原因部分を除去します。

心原性脳塞栓症(症状)

心原性脳塞栓症とは、心臓の中にできた血栓が原因となって、脳内血管まで流れて詰まらせるタイプの脳梗塞です。心房細動という不整脈や心臓弁膜症などの心臓病をもっている方に多いとされています。心房細動という不整脈があると、心臓の左心房で、血液の滞りが続くと血栓が出来やすくなります。なぜなら、血液は元々、出血に備えて流れていないと凝固する性質を持っているためです。心臓でできた血栓は、左心房、左心室、大動脈、総頚動脈、内頚動脈と、血流に乗って飛んでいき、いよいよ脳の血管まで辿り着いて脳の血管に詰まると脳梗塞を発症してしまいます。小指の爪ほどの大きさで脳の半分が梗塞するくらいの重篤な脳梗塞を発症します。

心房細動は高齢者に多く見られ、70歳をこえると約8%の人に起こるといわれています。心房細動そのものが命に関わることはほとんどありませんが、心房内の血流のよどみにより血栓ができて、脳梗塞が発症してしまうのです。 脳卒中データバンク2015によると、急性期脳梗塞患者(78,098人)の中で、心房細動の合併率は男性22%、女性26%であり、加齢と共にその頻度は増加していました。80歳代では男性30%、女性35%に心房細動を認めます。一度血管が詰まり梗塞を起こした後に、血栓が溶けた後に梗塞部へ血流が流れることにより梗塞部から出血することがあります。これを“出血性梗塞”といって、心原性脳塞栓症では比較的よく認められます。出血性梗塞は、小さい場合は特に症状は認めませんが、まれに大きな出血を認める時は、急激に症状が悪化することがあります。

症状
半身の運動・感覚障害(力が入らない、しびれる)、意識障害と言語障害(しゃべりづらい)、食べ物が飲みにくい、突然の視力障害、視野狭窄、歩行障害・めまい・ふらつき、突然の激しい頭痛

心原性脳塞栓症(診断・治療)

診断
まず、頭部CTで脳出血やくも膜下出血の有無を確認し、MRI、MRA、心エコー、頸動脈エコー、経食道心エコー、凝固系、線溶マーカー採血、心電図、ホルター心電図などで診断します。明らかな塞栓源が見つからない時は、アテローム血栓性脳梗塞として治療を開始することも少なくありません。

治療
心原性脳塞栓症は、発症4、5時間以内の超急性期の場合には、tPA静注療法の適応となります。tPA投与にて、効果が無効の発症8時間以内であれば、脳血管カテーテルによって血管内治療(血栓回収療法)を行います。この治療は発症からの時間が早ければ早いほど効果的であり、遅ければそれだけ効果が期待できなくなるので、速やかに行わなければいけません。早ければ劇的な神経予後の回復も期待できます。心原性脳塞栓症の薬物治療は、血栓の再発予防のため抗凝固療法が中心となります。急性期には、ヘパリンという抗凝固剤の点滴薬を用います。その後は、ワルファリンという内服薬に切り替えることが、今までの一般的な治療方法でした。ただワルファリンは、定期的な採血をして用量調節が必要で、相互作用を示す薬剤が多く、頭蓋内出血や消化管出血などの合併症が起こること、ビタミンKの多い食物(納豆、クロレラ、青汁など)の摂取制限が必要なことなどの問題点がありました。そこで最近では、新規経口抗凝固薬(NOAC)という薬が認可されました。現在、ダビガドラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン(全て薬品名)の4種類が販売されており、この薬は非弁膜症性心房細動による心原性脳塞栓症のみに適応があります。NOACのメリットは、採血不要で、用量調節も必要なく、頭蓋内出血の危険性が低い、食事や併用薬の影響がほとんどない、などがあります。一方、NOACのデメリットとして、採血によって効果の確認ができない、薬価がかなり高い、飲み忘れで効果がなくなり、脳梗塞を起こす可能性があるということです。

脳出血
脳出血

脳出血とは、高血圧が原因で脳の細い血管が弱くなり裂けて、脳の中に直接出血することです。ある日突然、ほとんど前触れの症状はないままに起こります。出血した血液は血腫という塊をつくり、これによって直接的に脳細胞を破壊したり、その先に酸素や栄養が行かなくなり組織が死んだり、様々な脳の障害を与えます。 喫煙やストレス、アルコールも危険因子となります。

症状
症状は出血部位により様々で、頭痛、吐き気、意識障害、めまい、手足の痺れや麻痺、ろれつ困難などが代表的です。

診断
頭部CTで容易に診断ができます。MRIでは出血源の脳動脈瘤や動静脈奇形の有無を確認することができます。

治療
脳出血の急性期治療として血腫を除去する手術(開頭術、内視鏡手術)や血圧のコントロールを行います。血圧は収縮期血圧140mmHg未満を目標として迅速に下げていきます。中程度で機能予後の改善や意識障害の改善が見込める時には、手術が選択されます。軽症や重篤であれば内科的治療を行います。合併症として水頭症があります。早期からのリハビリテーションを行います。

くも膜下出血
くも膜下出血

くも膜下出血とは脳を取り囲んでいるくも膜と脳の間に出血がたまることを言います。約80%が脳動脈瘤の破裂によって起きます。脳動脈瘤とは血管の分岐部に膨らみができ、高血圧、遺伝などが原因で発症します。頻度は1年で人口10万人あたり約20人(日本)、好発年令は50才台以降、女性の方が2倍多く、危険因子として高血圧・喫煙・多量の飲酒、遺伝性などが言われています。動脈瘤はほとんどが10ミリ以下ですが、約5%で大型(11ミリ以上)となり、そうなると治療が難しくなってきます。また動脈瘤は周りの神経や脳を圧迫し症状を起こすこともあります。

症状
突然後ろからハンマーで殴られたような痛みが走り、激しい嘔吐、頭痛、意識障害を起こします。くも膜下出血は再出血するリスクが高く、1ヶ月以内に約半数の方が再出血するといわれています。くも膜下出血の重症度は発症したときの意識障害の程度(頭痛だけなのか、意識障害がどの程度強いか)によってきまります。昏睡状態の場合は治療が出来ない時が多いのも実情です。

3大合併症
再出血:24時間以内が多い
脳血管攣縮:ピークは8-10日
正常圧水頭症:数週から数ヶ月後に症状が出ることが多い

診断頭
部CTにて約90%の確率で鞍上部周囲のくも膜下腔の場所にヒトデ型の高吸収域を認め、MRIのFLAIR撮像法では高信号域として認められます。3D-CTでの診断能力が高く迅速で低侵襲なため緊急で使用されることが多い。少しリスクはありますが、脳血管造影(DSA)検査により確実な診断ができます。

治療
開頭手術とクリッピング術:頭蓋底などアプローチ困難であったり、高齢な方にはふむきである。
瘤内コイル血栓術:重症患者や高齢の方でも行いやすい
正常圧水頭症:発症後約1ヶ月ほどしてから、認知症、意識障害、歩行障害、失禁などが現れ、これに対してはシャント手術を行います。