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肝臓の再生医療
肝臓の再生医療
肝臓は、体の中でもっとも大きな臓器で、様々な重要な機能を持っています。そのため、肝臓に障害が起こると、他の臓器にも多大な影響を及ぼします。また肝臓は、不具合があったとしてもその症状が表に現れにくいため、「沈黙の臓器」とも呼ばれることも。異変に気づいた時には、すでに元の状態に戻らなくなっていることが多いのです。だからこそ、早期に異状を発見し、治療にあたることが重要になります。
従来の治療法である投薬や生活習慣の改善によって、ウイルス除去や脂肪肝の減少ができたとしても、一度ダメージを受けて繊維化してしまった肝臓は元には戻りません。しかし、幹細胞による再生医療により、損傷を受けた肝細胞を修復し、繊維化した肝臓を正常な機能に戻すことが可能となりました。
肝臓の繊維化が進行して肝硬変となってしまい、「残された治療法は肝移植のみ」という患者さんにも効果があります。幹細胞治療とは、ご自身の脂肪をごく少量を採取し、1ヶ月ほどかけて幹細胞を培養したあと、点滴で投与する治療法です。肝臓にメスを入れる必要は一切なく、身体への負担も少ないため、日帰りで治療を受けることができます。
このような方に適応されます
・肝炎(ただしウイルスの活動性が低い方。採血検査にて判断します)
・肝硬変
・脂肪肝
・アルコール性肝障害
・自己免疫性肝炎
・血液検査で肝機能の数値が高い方
・薬物性肝障害
従来の治療法と再生医療の違い
例えば肝炎ウイルスの場合、薬物療法によって、ウイルスを消滅させたり活動性を低下させたりすることは可能でしたが、一度障害を受けた肝細胞や繊維化してしまった肝臓を、正常な状態に修復することは困難でした。しかし、幹細胞による再生医療は、肝臓の炎症や繊維化した部分を、再び正常な機能に戻せる可能性があります。肝臓の繊維化が進むと肝硬変となり、やがて肝癌の原因となります。そして、肝硬変の主な原因となるのが、肝炎や脂肪肝です。出来るだけ早期に再生医療を行うことで、肝硬変から肝癌への進行を抑えることができます。また、肝臓を元気にすることで、厳しい食事制限を気にする必要性も薄まるでしょう。
肝臓の働き
・栄養素を蓄えエネルギーに変える
食べたものを、体内に吸収しやすいように変換し、必要に応じてエネルギーに変えます。
・胆汁を作る
脂質とタンパク質を分解しやすくするために、胆汁を作り、脂質やコレステロールを調整します。胆汁には「胆汁酸」「ビリルビン」「コレステロール」が含まれています。
・有害物質の解毒や分解
アルコールや毒物、アンモニアといった、体に悪い物質を分解してくれます。
肝障害が進行する前に治療を
過度のアルコール摂取や肝炎、脂肪肝などによって、肝臓の機能が低下しても、初期の頃は症状が現れにくく、気づいたときにはすでに肝臓の繊維化が進行していることがよくあります。また、初期症状の段階で薬による治療を行ったとしても、一度繊維化してしまった肝臓は元には戻らないため、出来るだけ軽症のうちに幹細胞治療を受けることをお勧めします。肝障害を放っておくと、肝臓の繊維化が進行して肝硬変となり、やがて肝癌となるリスクが高まります。
肝臓病の種類
肝炎
何らかの原因により、肝臓の細胞に障害を受け、肝機能が低下します。原因として多いのは、ウイルス性肝炎です。A・B・C・E型の4種類があり、D型ウイルスによる感染は、日本では発症しません。慢性化しやすいのはB型ウイルスとC型ウイルスによる肝炎です。放置しておくと、肝硬変ひいては肝癌になる可能性が高まります。
脂肪肝
脂肪肝は、食べ過ぎや運動不足、過度の飲酒といった、生活習慣の乱れによっておこる病気としてよく知られています。腹部超音波検査では、肝臓が白く見え、脂肪がついている箇所が確認できます。健康診断を受けた際に、脂肪肝を指摘される方も多いでしょう。ただ、脂肪肝を発症しただけでは、症状はほとんど現れません。また、お酒をほとんど飲まない人が発症する脂肪肝のことを、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と呼びます。このNAFLDの中に、肝炎が持続して徐々に線維化が進行する一群があることが、最近の研究で分かってきました。これを非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)と呼びます。NASHを発症した場合、肝炎が改善しなければ、やがて肝硬変や肝癌になります。これらは、食生活の改善によって症状を改善することが可能です。確定診断として、肝生検という肝臓の組織の一部を採取する検査が必要となります。
自己免疫性肝炎
自己免疫性肝炎(Autoimmune hepatitis:AIH)とは、何らかの免疫異常により、自らの肝細胞を攻撃する病気です。中年の女性に多く見られます。通常は自覚症状がなく慢性的に経過しますが、急性肝炎のように発症する際は、皮膚の黄疸・食欲不振などが現れます。高ガンマグロブリン血症や抗核抗体などの、自己抗体の陽性所見が特徴的です。治療法としては、ステロイドを使用します。
肝癌
肝臓に発症する原発性肝癌には、肝細胞に由来する肝細胞癌と胆管上皮細胞に由来する胆管細胞癌の2種類があり、発症する割合は肝細胞癌が90%強と、大多数を占めます。主な原因は肝炎ウイルスで、本邦においては、C型肝炎ウイルスが約60%、B型肝炎ウイルスの持続感染が約15%と認められています。他の要因としては、アルコールや自己免疫性、代謝性肝疾患などがあり、近年では飲酒歴のない脂肪肝(非アルコール性脂肪肝炎:NASH)も原因だということがわかってきました。初期にはほとんど症状はありませんが、進行すると食欲不振や微熱、腹部膨満、黄疸、浮腫など様々な全身症状が現れます。診断方法としては、血液検査によるASTやALTといった肝機能検査のほか、PIVKA-2やAFPなどの腫瘍マーカーが有用です。また腹部エコーやCT、MRIなどで腫瘍の大きさや個数の増大、進行の具合を精査します。ラジオ波焼灼療法による局所治療や外科手術、カテーテルによる肝動脈化学塞栓療法、分子標的薬といった治療法があります。