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脊髄損傷の再生医療
脊髄損傷の再生医療
脊髄とは、脳と身体をつなぐ神経の束のことです。交通事故や怪我などで脊髄を損傷すると、損傷部以下に、運動麻痺、知覚麻痺、自律神経障害、排尿・排便障害などが生じます。損傷の程度によって、一部機能が残った「不完全麻痺」と、全く動かない・何も感じない「完全麻痺」とに分かれます。従来、脊髄損傷に対する有効な治療法はなく、多くの方が後遺症を抱え、車椅子や寝たきりでの生活を余儀なくされていました。しかし近年、幹細胞による神経再生の研究が進み、実際の臨床でも治療が行われ、麻痺が回復する症例が報告されています。
当院の脊髄損傷の幹細胞治療の特徴
脊髄損傷した部位に、直接幹細胞を投与できる
国内における脊髄損傷に対する再生医療のほとんどは、培養した幹細胞を血管の中に点滴で投与するという手法を採っています。しかし、これではせっかく培養された多くの幹細胞が、血管を通った後に全身に回ることになるので、脊髄の損傷部位に到達できる幹細胞は非常に少なくなります。そこで当院では、損傷した脊髄に直接幹細胞を投与することで、幹細胞の効果を最大限に引き出す治療を行なっています。これは、国内ではまだほとんど行われていない、画期的な治療法です。脊髄損傷部への直接投与といっても、簡単な注射での処置となるため、痛みなどはほとんどありません。
脂肪由来の幹細胞を使用
脊髄損傷の再生医療には、骨髄由来の幹細胞を使用する方法と、脂肪由来の幹細胞を使用する方法の2つがあります。当院では、脂肪から採取した幹細胞を使用する方法を採っています。その理由としては、脂肪幹細胞の方がより多くの細胞を培養できるので、そのぶん治療効果が高いからです。また最近の研究や論文では、脂肪由来の幹細胞の方が骨髄由来の幹細胞よりも、治療の成績が良好であるという多くの報告が上がっています。加えて、骨髄から幹細胞を採取する際には、骨髄穿刺(マルク)を必要とするため、感染症などのリスクが高いというのも、当院が脂肪由来の幹細胞を使用する理由のひとつです。
細胞加工室(CPC)とは
自身の脂肪を採取しそこから幹細胞だけを取り出して培養します。その培養する施設のことをCPCといいます。当院のCPCは国内トップクラスの培養技術があり、冷凍せずに幹細胞を投与できるので治療効果を最大限に引き出せます。また、他の動物の血液は使わず自身の血液を使用して培養するので拒絶反応やアレルギー反応はほとんどありません。すべてご自身の細胞と血液を使用することにこだわりました。
脊髄損傷について
原因
国内における脊髄損傷の患者数は10万人を超えており、毎年約5,000人の新たな患者が出ています。主な原因としては、交通事故、転落、スポーツ外傷、転倒など。特に、高齢者の方に多いのは転倒です。さらに高齢者の方は、骨粗しょう症などの影響により、脊髄損傷を引き起こすリスクが高まります。これら以外にも近年、頸椎変形による非骨傷性頸髄損傷が増えています。特に原因が見られなくても、少しの外力で脊髄の中心が損傷して手の痺れや使いにくさが生じてしまうのです。
症状
脊髄の損傷部位によって、麻痺する箇所やその種類が変わってきます。また、損傷が不完全か完全かによっても異なります。下肢の不全麻痺の場合、肛門の感覚は残り、括約筋を締めることが可能です。慢性期になると、本人の意思とは関係なく筋肉が痙攣を起こすこともあります。麻痺の程度によっては、歩くことが出来なかったり、手を自由に使うことが難しくなったりすることもあります。高い位置の頸椎レベルで損傷すると、呼吸ができなくなり人工呼吸器が必要となるケースも。また、排尿や排便機能も障害されるため、導尿カテーテルやオムツが必要となることがあります。運動、感覚以外にも自律神経系も障害されるため、怪我が治りにくかったり、体温調節が困難になったりします。
合併症
呼吸器症状
脊椎の頚部のうち、C4と呼ばれる部分は横隔膜を支配しており、C4およびそれより高位の神経が損傷すると呼吸ができなくなるため、人工呼吸器が必要となります。C4以下の損傷でも呼吸に必要な肋間筋や腹筋の麻痺によって呼吸量が少なくなり、肺炎や無気肺、痰が出しにくいなどの症状が現れます。
循環器症状
脈のスピードの低下や、起き上がる時に血圧が下がる起立性低血圧、下肢の運動障害による深部静脈血栓症などの症状があります。
消化器症状
脊髄損傷の急性期には、ストレス性の胃潰瘍などがあります。また腸の動きが悪くなってガスが溜まり、麻痺性イレウスとなることもあります。
泌尿器症状
排尿機能が障害されることで、尿路感染症を引き起こしやすくなります。長時間車椅子に座っていたり寝たきり状態が続いたりすると、圧迫されている皮膚の血流が悪くなり、褥瘡(床ずれ)を起こし、細胞が壊死します。正常な状態であれば、皮膚に圧迫を受けると自ら体位を変えることができますが、脊髄損傷の場合、褥瘡を予防するにはまめに体位を変換してもらうしかないのです。
検査・治療
検査
XP CT MRIで診断します。
治療
脱臼や骨折による脊髄圧迫があるときには、手術を行うことがあります。